対称差の結合律について

以下, 全体集合を  X とします. 集合  A, B \in \mathfrak{P}(X) に対して, 

 A \bigtriangleup B := (A \setminus B ) \cup (B \setminus A)  

を対称差と言います.

実は,  \mathfrak{P}(X) は対称差  \bigtriangleup を加法, 交叉  \cap を乗法として単位的可換環の構造が入ります. 零元, 単位元はそれぞれ  \varnothing, X です.

この事実は地道にやれば確かめることができますが, 対称差の結合律だけ少し面倒です. 以下, 少し工夫して上の事実を示します.

 f \colon \mathfrak{P}(X) \ni A \mapsto \chi_{A} \in (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^{X}

ただし,  \chi_{A}=(a_{x})_{x\in X} は,   a_{x}=1 \, (x \in A), \, 0 \, (x \in X \setminus A) と定めます. 

このとき,  f全単射です. 終域の直積環から全単射によって  \mathfrak{P}(X) に誘導される演算により,  \mathfrak{P}(X) に環構造が入ります. ここで,   f の定義より, 加法が対称差, 乗法が交叉と一致することが分かります. また,  \varnothing \mapsto (0)_{x} および,  X \mapsto (1)_{x} より, 零元と単位元も分かります.  \Box

(作成中)

コーシーの関数方程式

 f \colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} が加法群の準同型, すなわち, 任意の x, y \in \mathbb{R} に対して,  f(x+y)=f(x)+f(y) (Cauchyの関数方程式)ならば, 任意の x \in \mathbb{R} に対して,  f(x)=f(1)x と言えるでしょうか?


答えはNoです.


 x \in \mathbb{Q} ならば,  f(x)=f(1)x となることは容易にわかります.


 fが(標準位相で)連続ならば,  \mathbb{R} のハウスドルフ性と,  \mathbb{Q} が稠密部分集合なことより,

任意の x \in \mathbb{R} に対して,  f(x)=f(1)x が従います.


しかし,  f の連続性を仮定しないと以下のような反例が選択公理を仮定すれば作れます.


 \mathbb{R} \mathbb{Q} ベクトル空間とみなして,  1 \in \mathbb{R} を含む基底  \mathfrak{B} をとります.

このとき,  x \in \mathbb{R} は有限和  x=\displaystyle\sum_{b \in \mathfrak{B}} a_{b} b \quad (a_{b} \in \mathbb{Q}) と一意的に書けるので, 

 f\left(\displaystyle\sum_{b \in \mathfrak{B}} a_{b} b\right) := a_{1}

と定めるとこれはwell-definedでコーシーの関数方程式を満たします.

一方,  f(1)=1より,  f|_{\mathbb{Q}}=\mathrm{id}, \, f(\sqrt{2})=0 \neq \sqrt{2} より,  f は不連続です.

(作成中)



コンパクト集合の共通部分

2本の  \mathbb{R} を原点以外で同一視した商空間を  Xとします. 


すなわち,  X:= (\mathbb{R} \times \{0, 1\})/{\sim}.

だだし,  \sim  (x, 0) \sim (x,1) \, (x \neq 0) の生成する最小の同値関係.


つまり,  X は“原点が2つある \mathbb{R}”です.

 

 Xは局所ユークリッドだがハウスドルフ空間でない T_1空間の例になっています. (2つの原点は開集合で分離できないため.)

 

2つの原点をそれぞれ端点とする閉区間  [0,1] \times \{i\} \, (i \in \{0,1\}) の像は共にコンパクトですが, 

共通部分は (0,1] \times \{0\}の像になりコンパクトではありません.

 

(文字の大きさがなぜか異なってるので後で修正したい.)

H-spaceの基本群はアーベル群

(数式がうまく表示されないようです.)

\( \textbf{Definition.} \)

位相空間  X 上に連続な二項演算

\( m \colon X \times X \to X \)

 \qquad (x, y) \mapsto x \ast y

が定まっているとする.

このとき, 単位元  e \in X が存在するとき, すなわち,

任意の  x \in X に対して,

 e \ast x = x = x \ast e

が成立するとき,  (X, m, e) はH-spaceであるという.

 

 \textbf{Proposition.}

H-space  (X, m, e) の基本群  \pi_{1}(X, e) はアーベル群.

 

 \textbf{Proof.}

連続写像  m が基本群に誘導する準同型

 m_{\ast} \colon \pi_{1}(X, e) \times \pi_{1}(X, e) \cong \pi_{1}(X \times X, (e, e) ) \to \pi_{1}(X, e)

を考えれば, 

 [c_{1}], [c_{2}] \in \pi_{1}(X, e) に対して,

 [c_{1}] \ast [c_{2}]:=[c_{1}\ast c_{2}]\in\pi_{1}(X, e)

がwell-definedに定まる.

ただし,

 c_{1} \ast c_{2} (t) := c_{1}(t) \ast c_{2}(t) \quad (t \in [0,1] )

とする. このとき,  e を基点とする定値ループも同じ記号  e で表せば,   [c] \ast [e]=[c]=[e] \ast [c]  を満たす.

道の積を  c_{1} \cdot c_{2} とすれば,  e を基点とするループ c_{i} \, (1 \leq i \leq 4) に対して, 

 ([c_{1}] \cdot [c_{2}] ) \ast ([c_{3}] \cdot [c_{4}]) = ([c_{1}] \ast [c_{3}]) \cdot ([c_{2}] \ast [c_{4}])

が成立. よって,  [c] を単に  c と略せば,  \pi_{1}(X, e) において,

 c_{1} \cdot c_{2} = (c_{1} \cdot e) \ast (e \cdot c_{2}) = c_{1} \ast c_{2},

 c_{2} \cdot c_{1} = (e \cdot c_{1}) \ast (c_{2} \cdot e) = c_{1} \ast c_{2}.

ある3次多項式の有限体上での因数分解の様子

突然ですが,  X^{3}-3X+1 \mathbb{F}_p[X] においてどのように因数分解されるでしょうか.

 代数閉包上で因数分解すれば解けますが, 代数的整数論を仮定したら次のように示せます.

 

以下,  \zeta=e^{2\pi\sqrt{-1}/9} とする.

 

 K=\mathbb{Q}(\zeta+\zeta^{-1}) は3次アーベル拡大体であって,

 K の判別式を計算すると  3^{4} なので,

 K の整数環 \mathcal{O}_{K}における有理素数pを素イデアル分解の様子は, 

 p=3 のときのみ, 分岐して,  p=\mathfrak{p}^{3}.

 

また,  \mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta)/\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/9\mathbb{Z})^{\times} において,

中間体  K は部分群  H=\{ \pm 1+9\mathbb{Z} \} と対応してるので,

有理素数  p \neq 3 は,  f=\min\{ n \in \mathbb{Z}_{\gt 0} \mid p^n + 9\mathbb{Z} \in H \} とすれば,

 3/f 個の相異なる素イデアルの積に分解します.

 

したがって,  p \equiv \pm 1 \pmod{9} のとき,  p=\mathfrak{p}_{1}\mathfrak{p}_{2}\mathfrak{p}_{3} ,

 p \equiv \pm 2, \pm 4 \pmod{9} のときは,  pは素イデアル.

 

 \zeta+\zeta^{-1} \mathbb{Q} 上の最小多項式 X^{3}-3X+1 \in \mathbb{Z}[X] なので,

 X^{3}-3X+1 \in \mathbb{F}_{p}[X] は,

 p=3 のとき,  (X+1)^{3},

 p \equiv \pm 1 \pmod{9} のとき, 相異なる一次式の3つの積,

それ以外の  p では,  \mathbb{F}_{p} 上既約と分かります.

 

 

加法群と乗法群が群同型となる単位的可換環の例

 R=\mathbb{F}_{2}[X_{1}, X_{2}, \dots ]/I とする.

ただし,  I \{ X_{i}X_{j} \mid i, j \geq 1 \}で生成される  \mathbb{F}_{2}[X_{1}, X_{2}, \dots ]イデアル.

このとき,  アーベル群として

  R \cong \displaystyle\bigoplus_{k=0}^{\infty} \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \cong R^{\times}  

が成立.

また,  R 0, 1以外の冪等元を持たない.

実際,  f \in R は, 有限和 

 f=a_{0} + \displaystyle\sum_{k=1}^{\infty} a_k X_k \quad (a_{k} \in \mathbb{F}_{2})

と一意的に書けて,  f^{2}=a_{0}^{2} に注意すれば, 冪等元は f=a_{0}=0, 1 のみ.

また,

 R \ni f \mapsto (a_{k})_{k=0}^{\infty} \mapsto 1 + \displaystyle\sum_{k=1}^{\infty} a_{k-1} X_k \in R^{\times}

 が群同型を与える.