コーシーの関数方程式

 f \colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} が加法群の準同型, すなわち, 任意の x, y \in \mathbb{R} に対して,  f(x+y)=f(x)+f(y) (Cauchyの関数方程式)ならば, 任意の x \in \mathbb{R} に対して,  f(x)=f(1)x と言えるでしょうか?


答えはNoです.


 x \in \mathbb{Q} ならば,  f(x)=f(1)x となることは容易にわかります.


 fが(標準位相で)連続ならば,  \mathbb{R} のハウスドルフ性と,  \mathbb{Q} が稠密部分集合なことより,

任意の x \in \mathbb{R} に対して,  f(x)=f(1)x が従います.


しかし,  f の連続性を仮定しないと以下のような反例が選択公理を仮定すれば作れます.


 \mathbb{R} \mathbb{Q} ベクトル空間とみなして,  1 \in \mathbb{R} を含む基底  \mathfrak{B} をとります.

このとき,  x \in \mathbb{R} は有限和  x=\displaystyle\sum_{b \in \mathfrak{B}} a_{b} b \quad (a_{b} \in \mathbb{Q}) と一意的に書けるので, 

 f\left(\displaystyle\sum_{b \in \mathfrak{B}} a_{b} b\right) := a_{1}

と定めるとこれはwell-definedでコーシーの関数方程式を満たします.

一方,  f(1)=1より,  f|_{\mathbb{Q}}=\mathrm{id}, \, f(\sqrt{2})=0 \neq \sqrt{2} より,  f は不連続です.

(作成中)